唐突ですが、私としてはサービス版ていうのはもう止めにしたいのです。
ひと昔前の白黒の時代では現像はプロに任せてもプリントは自分でされる方も多かったそうです。そこでどこかのプリントメーカーさんのどなたかがひねり出したアイデアがありました。それが「同時プリント」というものです。フィルムを現像したら一緒にプリントもしましょう、というシステムを作り上げたのです。その時にプリントされる印画紙のサイズのことをサービスサイズ(サービス版)と呼んだようです。
ですが現在では0円プリント(厳密にはこの言い方はいけないそうですが)でプリントはフィルムの現像料と込みになっていることから、私はこれこそサービスプリントというものではないかと思うのです。ならば写真屋さんが作り出しているものは一体なんなんだ、という疑問にぶち当たりました。
私たちの店では本当にフィルムなら1コマ1コマ、プリントなら1枚1枚に情熱を注げと教えられながらプリント作業しています。そうなるととてもではありませんがセット価格なんかにはできません。セット価格にしたら逆に今よりも高くなってしまうものも出てきてしまいます。
私はセット価格のものの存在は否定しません。それはお客様が使用用途に応じて選択肢のひとつとしてあるべきものだからです。ですが残念なことに、どこの写真屋さんはどれがどのくらいできて、その品質が客観的に見てどの位のものなのかという基準がどこにも存在しないのです。
料理屋さんなら情報雑誌もこぞって取り上げて地域別の美味い処を教えてくれるのに。
基準という意味では高品質と看板に書かれていることがそのお店の品質を正確に伝えているわけではありません。料理だって自分で「うまい店」と書いてあるものを信じるひとはいますか?
写真の話に戻りますが、写真の値段が高いから良いというのも私はどうかな、と思います。
ただプリントを作り上げるのも仕事ですから当然、利益は必要です。でなければただのボランティアになってしまう。きちんとした仕事に対して正当な報酬をいただく。仕事としてごく当たり前のことです
ではきちんとした仕事とは何か。
私は写真屋さんがお客様にどれだけ最良のプリントを作って差し上げることができるか、ということではないかと思います。それだけではなくまだまだいろいろありますが、少なくともそのお店にとって写真がメインの商品であるなら、そうありたいと思います。
そういう意味で、私たちの店にはサービス版はもう存在しないのです。言葉としては昔からの癖でつい言ってしまうことはあるんですけどね。
番外 サービス版という言葉